
一緒に過ごす誕生日は、これで5度目。
この5年の間に変わったことも多かったが、変わらないこともある。その一つがこの日の部屋の派手な装飾と、1日では食べきれない大きさのケーキ、二人で迎える10月1日だ。
「願い事は?」
いつものように口角を上げるクラウス。僕もいつものように隣に座った。クリームの甘い匂いが鼻をくすぐる。
願い事は元々苦手だった。
手を組んで待っているだけで、願いが叶ったことなんてなかったから。
「決めてある」
それがこうして、迷わず願えるようになったのはいつからだろうか。
二人で待ってみるのも悪くない。
気まぐれで小さな奇跡を。
隣にいるクラウスの微笑みが、ろうそくの火に照らされ揺れていた。
『明日も変わらぬ今日を』